浅草橋古
関東地方は今月10日梅雨入りしたわけだが、その直後2日間くらい雨が降っただけで以降は10日間は厳しい日差しが照りつける日が続いている。今が梅雨であると言い張っても無理がある気持ちになっている。
ラーメン史の中で大きな存在である「大勝軒」。その「大勝軒」は4系統存在する。1つは『丸長』@荻窪(閉業)から派生した「丸長のれん会」に所属する「丸長大勝軒」系で、『中野大勝軒』や『代々木上原大勝軒(閉業)』がある。『東池袋大勝軒』も創業店主山岸氏存命の頃は属していたが今は退会しているそうだ。
2つ目は一番名が知られている「東池袋大勝軒」系列。特製もりそばが有名。創業店主山岸氏が半ば大盤振る舞いの暖簾分けをしたので「大勝軒のれん会」という一大団体になっていた。しかし山岸氏死後お家騒動が発生し分裂、一部は箔をつける為に「丸長のれん会」に所属した店もあるそうだ。
3つ目が先2つとは全く祖を異にする、たまたま屋号が被ったけどこちらも有名な「永福町大勝軒」系列。たっぷりラードに強めの煮干し、洗面器と形容される大きな丼での提供スタイルで有名。
そして4つ目が最も知られていないけど最も古い「人形町大勝軒」系列。先の3つとは全く無関係。戦前から続いた中華料理店が祖になっているので別名「中華料理店系大勝軒」とも言われる。日本ラーメンの始祖鳥みたいな存在である『浅草來々軒』が大繁盛しているのを目の当たりにした創業店主が『來々軒』開店から2年遅れた1913(大正2)年に開業したらしい。1986(昭和61)年まで営業を続けたが一度閉店。その2年後の1988(昭和63)年に何と喫茶店「珈琲大勝軒」として復活した。それも2020(令和2)年には完全閉店してしまったそうだ。
あれ?自分は18年前確かに『中華料理 大勝軒』人形町店に訪れているのに昭和61年に閉業ってどういうことだ?と思って調べたら、元々の『人形町大勝軒』で26年間料理長を務めていた人が1987(昭和62)年独立して人形町で開いた店だったようだ。しかしその店も2010(平成22)年には閉店してしまったらしい。というわけで幾つか暖簾分けがあったこの人形町大勝軒系列店も今やそのほとんど閉店してしまい、唯一正統後継店と言われる店が浅草橋近辺にあるらしいので行ってみることにした。
『浅草橋大勝軒』。1946(昭和21)年創業ということは終戦直後に開店したんだ。何か凄いな。浅草橋駅から歩いて4,5分くらいの路地にあった。外観からして渋い。開店8分前くらいに店に到着。まだ暖簾が出ていなかったので近くの「まいばすけっと」で涼んでから行ってみると店前に2人いたのでその後に続いた。5分くらい前倒しで暖簾が出され店内に案内された。奥にある厨房は暖簾で目隠しされていたが高齢の爺さん婆さんともう1人が調理場にいるのが見えた。あと接客係のおばちゃん店員1人。水入りコップを持ってきてくれた時に口頭で注文。客席はテーブル席のみで1人卓1つと2人卓2つ、4人卓が5つあった。正規開店時間になると続々来客があり満席で一時的に外待ち客もいたようだ。
中華料理店なのでメニュー表をみると一品料理が沢山あったがラーメンセットがあったのでそれを注文した。半ライス以外におかずが4種類から選べるタイプ。野菜炒め/しょうが焼き/唐揚げ/シュウマイの中から1つを選択する。シュウマイを注文した。ラーメンは単品だと650円。
麺は白っぽい中細ストレート。柔柔な茹で加減。具は刻みネギ、平メンマ数枚、蒲鉾1切れ、チャーシュー1枚。小ぶりな白い丼で提供された事もあってこの上なくシンプルな一杯に写った。
スープをレンゲで一口飲んでみた。…味がしない。ほぼお湯。遠くに醤油っぽい味が微かに感じる程度。でも作為的なものが何一つないので、逆に嬉しかったくらいだ。「ラーメンって最初はこうだった」というのを令和7年にそのまま出されたみたいな感覚。現在新横浜ラーメン博物館に復刻し営業している『浅草來々軒』は当時を極力再現して…って説明して提供しているけど、本当に当時のラーメンをリアルに検証再現したらこれに近い一杯になるはずだと凄く納得がいった。けれどもこの一杯をラー博で提供することは流石に出来ないというのもまた理解出来た。たぶんこのラーメンはあんかけや具材をプラスして提供するのが前提なのだと思う。でもそれだと原初のラーメンというものを体験出来ない。今日わざわざ足を運んで良かったと思った。
少しベチャッっとしたシュウマイ3個。これは食感を楽しむもの。中華そば店が餃子を提供するようになったのは戦後満州からの復員兵達が作ったのが始まりとされていて、戦前は広東料理の焼売が普通だったそうだ。ここも歴史が感じられて良かった。
そんなわけで本当にラーメンの原風景を体験出来た気がして良かった。自分は半ば知識欲から入った奇特なラオタなので、こういう体験がたまらない。店の雰囲気も歴史の重みも感じられたし、とても満足して支払いを済ませ退店した。




こんにちは
いつも楽しみに拝見させていただいております
「…味がしない。ほぼお湯。」で思い出しました
華香亭本店のラーメンもそんな感じでした
こちらは1908(明治41)年創業だそうですw
投稿: | 2025年6月22日 (日) 05時09分