昨年6月、室蘭遠征後にニコニコ動画にアップした7本の「ご当地ラーメン探訪」スライド動画。おかげさまで年末までに全て再生数4桁を達成出来た。やっぱり中国・四国編がなかなか伸びなかった。他のは2ヶ月くらいで既に4桁達成してたんだけどねー。それはともかく色々コメントもいただいた。その中で恐らく地元の人なのだろうが「激戦区の多治見がない」とか「信濃屋がない」だどの意見があった。最初の内は「いや激戦区巡りしているわけでも美味しい店を探しているわけじゃないから」と心のなかで返事をしていたんだが、正月休みの間に多治見を調べてみると、我好みの老舗店が幾つかあった。ご当地ラーメンと呼ぶには各店共通項が無いのだが、古くから地元の人に親しまれているという意味では地麺であるとも言える。岐阜は高山ぐらいしかご当地ラーメンが見当たらなかった事もあり行ってみることにした。
名古屋から中央本線に乗り45分で多治見に到着。愛知との県境に近い町なのだが、岐阜に入った途端いきなりのんびりとした景色に変わった。多治見は駅舎だけは立派で駅前はだだっ広いいかにも地方の寂しい雰囲気。多治見筆頭目的店は『信濃屋』なので本当であれば真っ先に店に向かうところだが、調査する中でもうひとう魅力的な店を見つけていた。そちらの店の方が駅から1.8kmと離れていて開店予定時刻も30分早かったので、そちらの店を先に訪問する事にした。その店は『大石家』という。県内だけではなく長野にも幾つもの暖簾分け店があり、「大石家系」と言ってもいい広まりを見せている。チャーシューの煮汁をお湯割りしたスープという千葉の竹岡式ラーメンを彷彿とさせるラーメンを出すという。多治見駅には結構早めに到着したので店に到着するのも早かった。当然店前には誰もおらず開店まで待とうかなーと店の様子を伺っていると、背後から軽トラックがやって来て運転していたおっさんが「ごめんね!今日臨時休業なのよ!ホントごめんね!」と言って去って行った。えー!これは久々にショックは大きいぞ。出鼻を挫かれる形となった。重要な目的店だったのに!
中華そば 大石家 本店
でもあのおっちゃんが教えてくれなかったら無駄に開店を待って時間をドブに捨ててしまうところだった。不幸中の幸として考える。気持ちを切り替えて筆頭目的店『信濃屋』へ向かうとしよう。…歩き始めて思い出した。そういえばこの近くに下調べの際気になる店のひとつとして選んだけど結果的に訪問予定から外した店があったんじゃなかったのか?食べログで再調査するともうそろそろ開店時刻だった。代わりとしてその店に行っちゃえ!再び戻ってその店へと向った。その店は『漢方ラーメン渡辺』という。4年前にオープンしたので求めていた老舗感はないんだけど、変わった一杯が食べられるのではと考えた。広い駐車場を囲むように作られた平屋の商業施設の一角に店はあった。我が訪問する頃ちょうど開店時刻を迎えた。入口脇に券売機。厨房には店主と男の店員1人。厨房周りにL字型カウンター11席。前後客ゼロ。
漢方ラーメン 渡辺 『漢方ラーメン』 500円
看板メニューを注文。値段の安さに驚かされる。麺は黄色い中細縮れ麺。具は薬味ネギ、ナルト2枚、チャーシュー2枚、きざみ海苔。スープは味噌っぽく見えるけど、よく見てみると茶褐色のスープに背脂のような何かが入っている。豚骨&鶏ガラベースのスープに高麗人参、干し海老、干し貝柱が入っているそうだ。その上に大量の黒胡麻と、クコの実もひとつ入って漢方らしい。胡麻の香ばしさが効いている背脂ラーメンのような感じ。だから黄色い縮れ中細麺がよく合う。これで500円とは文句ありません。
さて次こそ本日メインの目的店『信濃屋』へと向かう。方向が全く違うところにあるのでまた20分くらい歩いた。平屋の渋い店舗を発見。昭和5年に名古屋で創業し、戦火を逃れる為昭和23年にこの地で店を出したのだという。創業85年の歴史を誇る日本の代表するうどん店のひとつだ。営業は3時頃だが麺切れ次第終了。定休は日月火で全て仕込みに費やされる。結構な難関店だ。暖簾には「麺類」と書かれている。早速暖簾を割り入店。厨房は仕切りがあって見えないが、老齢の2代目店主が時々スープが濃い薄いないかと聞きに来ていた。あとおばちゃん店員が2人。店内は入口に4人がけテーブルが1卓あるだけで後は全て座敷。開店から10分後くらいの入店だったがほぼ席は埋まっていた。入口脇の2人卓の座敷に座った。
信濃屋 『支那そば』 880円
この店の名物は「香露かけうどん」なのだが、支那そばも有名。なのでまず支那そばを注文。具は刻みネギが少しのっているだけ。スープは優しい甘さのうどん汁にラードを入れただけのもの。麺がメインの食べ物だ。麺はやや固めの、きしめんのような平打めん。表面はツルッとしていて面白い食感。これは…ラーメンと言うより、どちらかと言うとうどんに近い。唯一無二の一杯だろうな。この一杯の為に多治見にやって来たのだ。満足だ。
信濃屋 『ころかけ(小)』 330円
周りを見ていると小さい丼で注文している老人を見かけた。店員に聞いてみると小さいサイズでも注文出来るというので、せっかくなのでここの名物「ころかけ」を小サイズで注文。これが衝撃だった。冷たいうどんなのだが、この麺の食感が凄かった。もちもちふわふわで、冷たい雪が溶けるような食感。生姜と胡麻とうどんつゆで冷たくてすっごいサッパリ。これは…支那そばより、かけころがメインの方が良かったみたい。老舗だからってだけで有名なんじゃないぞこの店は!正直値段は高いと思ったけど大満足だ。
店を出て本日最後の目的店へ。線路を渡り川を超え幸町の商店街に。こちらには『信濃屋』、『大石家』に並んで地元民に有名だという『中華亭』本店がある。昭和24年創業。市内に2つ支店を展開。店舗は先の『信濃屋』と違い、飾らない町のラーメン屋って感じ。赤い暖簾を割り入店。町は閑散としていて人はあまりいなかったのに、店内に入った途端ほぼ満員の盛況で驚いた。入口脇ににつかわしくない券売機。厨房には男の店員と女の店員各々2名で計4人。厨房前に一列のカウンター10席、4人がけテーブル席2卓と座敷に同じく2卓。客の年齢層は高め。カウンター席が2席ぐらい空いていたのでそこで着席。
中華そば 中華亭本店 『中華そば』 700円
ここのラーメンメニューは「中華そば」と「チャーシューメン」の二つのみ。老舗らしい勇気と潔さ。そしてこのいい顔をした一杯。麺は柔らかめに茹でられた中細平打ストレート麺。具はカマボコ2枚と細切りメンマと大きめのチャーシュー2枚。小さく正方形に切られた海苔が老舗らしい。スープは鶏ガラと昆布出汁の醤油スープ。タマネギのきざみこそ入っていないが、八王子ラーメンのスープに近い印象を受けた。これまで『渡辺』は老舗感がなく、『信濃屋』はほぼ「うどん」でラーメンを食べた気は起こらず、地麺巡りに来たという実感が得られなかった。でもこの『中華亭』の雰囲気と一杯はそれが十分味わう事が出来た。本日の締めとして大満足だった。
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