父記憶檍
木曜平日。父が他界した日の翌日。我の心を反映したかのように空にはどんよりと雲が立ち込め寒さも厳しい。心は緊張の糸が切れているが色々やらなければならない事がある。まず病院に父の着替え等を回収しに行った。父の亡くなった病院に何度も足を運びたくなかったので入院費を完済し病院を後にした。
こんな時でも我は生きているので気持ちの上では空腹感は感じていないのだが腹はグーグー鳴っていた。昨日はほとんど食事をしていなかったから。父の葬儀を前に今我が倒れるわけには行かない。しっかり栄養をとろうと馬車道にある『とんかつ檍』にやって来た。ここには父を二度連れてきた思い出があるからだ。初訪問は約5年前。肉料理には結構うるさい父だったけど喜ばせる自信があったからね。父はどちらかというとステーキ好きだったので最初に我が店を紹介した時「せっかく息子がごちそうしてくれるって言うから…」というような気持ちだったと思う。でもこの店のとんかつを一口食べて「美味い!」と言ってとても喜んでくれた。結構なボリュームだったけど父は完食してくれて嬉しかったなー。その後自分一人で食べに行ったと言っていたからかなり気に入ってくれたんだと思う。その後コロナ禍が始まったが約3年くらい前に「最後の機会かもしれないから…」とすっかり食が細くなってしまった父をもう一度この店に連れてきてあげた。その時も喜んでくれた。そんな思い出がある店だ。
店には午後2時半くらいに到着した。店前には待ち客の姿なし。入口脇のタッチパネル式券売機で食券を購入し店員に食券を渡すと指定された席に案内された。はっきり覚えていないが店員男2人女1人。先客7人後客2人くらいだったと思う。
気分的に量を食べられる感じではなかったので、平日ランチ限定のお値打ち「ロースかつ定食」を狙っていたのだが既に売り切れていた。数量限定だったのか。仕方なく上ロースを注文。
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