一風年史
朝だけ晴れ間は覗いたもののどんどん雲が優勢になりどんよりした空模様になった日曜休日。今日の目的店は決まっていた。本日最後の営業となる新横浜ラーメン博物館に出店している『博多一風堂1994』だ。それは同時に2022年7月1日からスタートしたラー博の巨大プロジェクト企画「あの銘店をもう一度」が完全にフィナーレを迎える日という事になる。
日曜日にラー博に突っ込んでいくというのは我としては無謀な行為になるのだが、背に腹は代えられない思いで家を出た。我としても初めての経験なので営業開始予定の30分前に到着出来るよう計画して狙い通り朝10時には新横浜ラーメン博物館へ到着出来た。ラー博会員側の列に既に11人ほどの行列が生じていた。最後尾について開店を待った。営業開始10分前にラー博館内へ入場が開始され地下へ向かう階段の前で開店を待った。定刻になり前客に続いて地下1階へ向かい即『博多一風堂1994』店舗前に並んだ。約2、3分程度の待ちで食券を買い入店する事が出来た。創業者の河原成美氏は今日は接客担当らしく客全員に挨拶をしてまわっていた。
『一平ちゃんへ愛をこめて』1800円+『一風堂とんこつコロッケ丼』500円=2350円
『博多一風堂1994』「一風堂クロニクル」最後を飾る限定メニューは、これまでかなり攻めたメニューの中でも一際群を抜くような狂い咲いた混ぜそばメニューだった。あまりの狂い咲き加減に怖くなり、保険として限定30食のサイドメニューも合わせて注文した。
最早「これがラーメンか?」と議論する事すら馬鹿らしくなるくらいの強烈なインパクトの一杯が提供された。これを最後に持ってきてしまうところが『博多一風堂』なんだなーと今ではよく理解出来るよ。いくら限定メニューだからって、客から金を取って提供するのが前提。その事を世界の『博多一風堂』が理解していないわけがない。それでもやる。そういうものを提供する。その姿勢が伝わってきた。それを理解できるようになったのは「一風堂クロニクル」限定メニューを、一部の別店主とのコラボラーメン以外は全て食べ続けて完走したからに他ならない。
麺はかために茹でられた中細縮れ麺。ボルケーノソースに様々なスパイスを加えて作ったというソースは、正にあのインスタント焼きそばの甘辛い独特の味わい。そのソースの味は生クリームだろうがチョコレートソースだろうがプリンだろうが、イチゴだろうがリンゴだろうがパインだろうが全て受け入れ吸収してしまう。そして食感を楽しむ材料にしてしまう。これこそ経験しないとわからない。これを食べたいと思う人がどれだけいるかは置いておいて、自分自身は実際経験が出来て良かったと思う。
コロッケ丼は予めソースがご飯にかけれれて、そこに衣かためで具材のじゃがいもホクホク、甘めの挽き肉が入ったコロッケと千切りサラダがのっている。完成されたサイドメニューと言って良いと思う。完食の大満足だった。
『博多一風堂』より『一蘭』の方が好みに合い、地方の老舗ラーメン店の昔ながらのラーメンが大好きで、普段でも限定メニューにはほとんど手を出す事はしない。そんな我が今回の「一風堂クロニクル」を完走し何を思ったか。ラーメンか?ラーメンじゃないものか?その瀬戸際を狙ったような、完全にイロモノと言われても仕方のないラーメンを食べ続ける事となり正直これは苦行かと思った事もあったけど、完走した今となっては本当に貴重な経験が出来て良かったなと思う。『博多一風堂』のラーメンは我の嗜好と違う事がハッキリしたがそれはしょうがない。けれども短期間ながらこれだけ深く『博多一風堂』を理解出来た人間の一人になれた、というは自負はある。この機会に恵まれ、こう言う経験を出来た人間はとても少ないと思う。何よりラーメンへの理解力が高まったという収穫が大きい。他の料理とは比較にならないほど懐が深い「ラーメン」という食べ物の限界値を、世界の『博多一風堂』が探求した結果を味わえたのだから。それは我が日本全国のご当地ラーメンを巡って探求している「ラーメンの多様性」に確実に通じている。こんな経験をさせてくれた『博多一風堂』創業者の河原成美氏には感謝の気持ちしかない。
そして明日、新横浜ラーメン博物館の51店舗目となる新店が発表される。約2年に及んだ「あの銘店をもう一度」が終了し訪問回数こそ減るとは思うが、これからも新横浜ラーメン博物館へ足を運ぶ事になりそうだ。
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