雨青葉台
朝から本降りの春の土曜休日。こんな日は自分の気が済むくらい部屋でダラダラと過ごしていたいと思ったが、結局10時前には傘をさして外出した。横浜駅で用があったので1時間ほど買い物をしてから横浜線に乗り込んだ。この雨の中結局田園都市線の青葉台駅まで足をのばしてしまった。昼間に青葉台に来るのは久々だ。
駅から歩いて10分くらいの場所に出来た新店『鴨だし中華そば 上ノ』を目指した。今月6日に開店したそうだ。昼営業のみだったので休日来るしかなかった。どうも串天飲酒場の昼営業形態のようだ。到着したのはちょうど正午くらい。店がなかなか見つからないなーと探したらビル2階の店だった。階段を上がると男の店員から「いらっしゃいませ」と言われたが看板等は無かったのでここが目的店か判らなかった。入口に文字だけのメニューがあり「鴨だし中華そば」と書かれていたのを見てようやく理解して入店した。落ち着いた雰囲気の内装だが少し高級感がある。厨房は奥にあり見えなかったが店員は男の店員2人と女の店員1人でいずれも制服を着ていた。客席は一列のカウンター8席と4人がけテーブル席3卓かな。席は指定されたが、水は大きなグラスで店員から提供された。口頭で注文。先客2人後客3人。
『鴨だし味玉中華そば 醤油』1350円+『麻婆とうふめし』450円=1800円
味玉付きのメニューを注文。醤油と塩から味を選択出来る。とりあえずは醤油を指定。このご時世だからもう驚かないと考えていたけど。基本メニューで1杯1200円はなかなかだなーと正直思った。それからサイドメニューも食べたかったのでミニ麻婆丼みたいなのを注文した。
綺麗に盛り付けられた一杯が登場。麺は細ストレート。具はきざみ葱、三つ葉、黒バラ海苔、メンマ数本、焼き葱、鴨チャーシュー2枚、トッピングの味玉丸1個。味玉は黄身がねっとりして味がよく染み込んでいた。スープは鴨南蛮的なものを予想していたが、そうではなくしっかりと鴨の旨味を活かしつつラーメンの味に寄せている。これはなかなか美味いね。
半分くらい食べたところで店員に言うと柚子を出してくれるそうなのでお願いした。てっきり小皿で提供されるものと思っていたら、女店員自ら目の前で大きな柚子をすりおろして食べかけのラーメンに投入してくれた。いや、それだけなんだけどさ。でもそれをきっかけにラーメンの二極化について考えてしまった。それについては後述することにしよう。
サイドメニューの麻婆豆腐飯は至って普通のものだった。ボリュームから考えても正直少々高く感じた。とは言え腹は満たされ満足感を得られた状態で支払いをして退店することが出来た。
昨年後半あたりから光熱費や食料品をはじめあらゆるものが値上げされた。全世界的なパンデミック発生や、安保理常任理事国自ら国境を超えて隣国に進行する等、正に乱世が到来し自由貿易というものが幻想化した為だ。それによりかつてラーメン店と客の間で暗黙の了解事項だった「1000円の壁」もあっさり突破された。だからラーメンは今までのクオリティを維持するとしたら高級料理化をせざるを得ない状況になった。趣味としてラーメン食べ歩きをしている人間は別にして、一般的な客からすれば「これほど出費するのならそれなりにゆっくり時間をかけて、落ち着いた雰囲気でじっくり食べさせて欲しい」と考えるはずだ。今日訪問した店は明らかにそちらに舵を切った店だった。麺とスープはもちろん具材一つ一つの質や盛り付けで高級感を演出して値段相応のものを提供しようとしていた。店内の雰囲気づくりもそう。客単価を上げる分、ゆったりした空間を作って客の回転率向上は諦める。利益も昔のラーメン行列店のようにならないと最初から想定しなくなる。一攫千金を狙うような野心を持った店主は現れなくなって普通の飲食店と同じになる。だからラーメンは今までのような強烈な個性をもった店は現れにくくなるだろう。自分の中では論外だった「予約制のラーメン店」も当たり前になっていくのかな?どうせ大金払うなら行列に並びたくないし。
一方、高級化の道を選択しないでギリギリの努力で今までと同じスタイルを継続する店は、当然あらゆるものを切り詰める必要にさらされるので、サービスは最低限にして客の回転率重視する。今話題になっているスマホ禁止、18歳未満の客お断り等の店が出現するのは自明の理。品質レベルが上がり効率化も進んでいる大手チェーン店と真っ向勝負になるからだ。客からすればかなりの出費を我慢して高級店に行くか、長時間並んで待ってサービスは最低限で我慢という店に行くか、どちらか選択を迫られることになっていくだろう。…結構悲観的な未来が見えてしまった。今後のラーメン店がこうならざるを得ない一例を見せられた気がしたよ。だから我は良い時代にラーメンの食べ歩きが出来て良かったなーと思うことにした。
降り続く雨の中、途中薬局やコンビニで買い物をしてから青葉台駅に戻り家路についた。
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