極悪豚臭
その昔、いや今でも関東近郊では本場福岡さながらの強烈な豚骨臭は「くっさー!」と忌み嫌われ近隣からは苦情の種となり「豚骨ラーメン店の無臭化」が進み「豚骨臭がしない豚骨ラーメン店」がすっかり定着してしまった。それがコロナ禍後の最近になって強烈な豚骨臭を放つ店を「くさうま」と称し行列が出来る傾向が出ているという。その筆頭の店が高円寺の外れの方にある『ラーメン健太』という店だ。我は特に最近になって豚骨自体の旨味の凄さに痺れるように大好きになってきた。だからこの店の事も気になっていたんだよ。福岡出身の店主は以前から長浜ラーメン店を営業していたが、コロナ禍で一度店を閉め福岡に戻って修行し直し昨年3月3日にリニューアルして「くさうま」の店になり行列店に変貌したという。ようやくこの店に来れたよ。
『青藍』が早く開店してくれたので早めに店に到着してしまった。店前に誰もおらず店もシャッターが半分閉まっている状況。開店まで25分かー。一度駅周辺まで戻って時間を潰しに行ってしまった。そして開店予定時刻の5分前くらいに戻ってみるともう15人を超える行列が出来ていた。やってしまったー。急いで列の最後尾につく。開店を待っていたが一向に列が前に進まない。これは店が定刻になっても開店していないと後々になって判った。おそらく20分以上は遅れて開店したと思う。それでも列から人が抜けていく事は無く、我の後ろの列も長く伸びていった。結局店に入れたのは並び始めてから1時間経過したくらいだったかな。長い間待っていた為か臭いに麻痺してあまり気にならなかったけど、入口近くになると流石に豚骨臭が強烈に漂ってきた。店主に1人づつ入口近くの券売機で食券を買うよう促され口頭でその内容を伝える。この時に麺のかたさの好みを伝えるらしかったようだが我は知らなかったのでそのまま普通になった。でも結果的に麺に不満は無かったね。食券はそのまま券売機下の入れ物に入れ、紙コップに自分で水を入れてレンゲも取って着席する。床はコンクリート打ちっぱなし。店主はワンオペで立ちっ放し。厨房と客席の境界は曖昧。普通の事務用折り畳み机がコの字型に8席配置されていて空いた席に座っていく。生卵は入口近くにあり無料で持っていって良いみたいだったが雰囲気に圧倒されてただ座ってラーメンの提供を待った。壁に貼られた「極悪スメルご賞味あれ」のイラスト付き貼り紙が目を引く。店主は1杯づつしっかり作っていくのが信条らしい。
筆頭ラーメンをシンプルに注文。麺は極細ストレート。具は刻み葱と海苔1枚、チャーシュー1枚。はっきり言って麺も具もあまり覚えていない。それは豚骨スープのあまりに強い存在感に圧倒され霞んでしまった結果だ。白濁している訳ではなく、むしろ澄んで見える豚骨スープなのに強烈な濃厚感は何故感じられるのか?もうレンゲひと掬い単位で骨粉のザラつきを感じる。そして豚骨出汁の旨さを強烈に感じる。文句なく麺も具も完食しスープ完飲した。もちろん大満足。やっぱり本物の豚骨出汁って強烈に美味いよ。食べ終えた丼は店の隅に積み重ね、レンゲは水が張られたバケツに投入。割り箸と紙コップは青いポリバケツに自分で捨てる。こんなところまで屋台風で長浜に来たみたいだ。店主に「ごちそうさまー」と言って退店した。評判になるのも納得したよ。駅に戻って電車に乗ってもしばらくは鼻孔に豚骨臭がこびりついていた。それが逆に心地よく、いつまでも残っていて欲しいと思ったくらいだ。
新宿で新宿湘南ラインに乗り換え横浜に戻って来て家路についた。




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