魚豚玉訪
今から約15年ほど前、ラーメン業界で「魚介豚骨」が一大ブームだった時代があった。新店がオープンすればそのほとんどが魚介豚骨の店。しかも店の内外装が黒い木材で作られた同じような店。あまりにも同じようなラーメンを出す同じような店が当時増殖していた。玉石混交と言うよりはっきり言えばほとんど石ばかりで、下手したら2口目くらい、食べたそばから飽きていくようなラーメンを提供する店がほとんど。その頃の嫌な思い出を持つ古いラオタ達は軽いトラウマを植え付けられ、中には今も魚介豚骨に拒否反応を示す人もいると聞く。我は幸運な事にラーメン食べ歩きを始めたタイミングだったので、色々な店を巡っていた為、数少ない「玉」の魚介豚骨を提供する店にも訪問経験があったので「極上の魚介豚骨ラーメンは圧倒的に美味い」事を知っていた。なので多くの「石」に躓いても魚介豚骨に拒否反応は起きなかった。
大岡川沿いの花見散歩を終えた我だがせっかくの有給休暇、これからはラオタ全開で都内で食べ歩く事にした。日の出町駅から京急で泉岳寺に移動、都営浅草線で日本橋に出て更に東西線に乗り換え木場駅で下車した。目指すは『麺屋吉左右』。間違いなく魚介豚骨の「玉」の方、しかも極上級の店だ。我は2007年7月9日に一度だけ訪問している。約15年の時を経て再訪だ。木場駅から川を超えて細い公園を抜け歩くこと約7分くらいで店に到着。時刻は開店予定の30分前。店前の待ち席に既に4人が座っていた。女店員がまた丸椅子を追加してくれたので座って待とうとすると「今厨房機器が壊れてしまって開店が遅れるのは確実でお待たせしてしまいますが良いですか?」と聞かれた。えー何でよりによって今?とか思ったけどせっかくはるばる来たので座って待つ事にした。我の後ろにも大勢の客が続いた。しばらくしてまた女店員が出てきて「今業者に電話しているんですがつながらず今日来てもらえるかわかりません」と言ってきた。これは意地を張ってこのまま待って時間を費やすとせっかくの平日休暇が台無しになる確率が高い。今日は縁がなかったと諦めて後ろ髪を引かれる思いで待ち席を立ち次の店へ向かう事にした。
麺屋吉左右
次の店になるべく早く到着しようとバスに乗るも不案内な土地でのバスなので反対方向へ向かうバスに乗ってしまって戻って次のバスを待って乗り直すなどの時間ロスをしてしまい店に到着したのは正午10分前。平日とは言え店の前には20人近い行列が生じていた。店内にも5人くらい待ち客がいる。開店予定から50分も過ぎスタートが遅れたらこうなるわな。この行列を作っている店の名は『こうかいぼう』。2001年10月14日開店の20周年を迎えた、こちらも魚介豚骨ラーメンの玉中の玉の店だ。我は2007年4月28日に一度訪問した事がある。15年ぶりの再訪、今回は願いが叶う。どうなるか。後でわかったがこの店は店主夫婦と思しき2人で回していた。接客担当の奥さんは腰が低い接客で気配りが出来て的確に席を采配し食後の現金会計も1人で行っていて凄いなーと感心したよ。店前で並んでいる間に奥さんに注文を確認され30分の待ちで着席。5分程度の待ちでラーメンが提供された。
約15年前に注文したものと同じ筆頭基本メニューを注文した。麺はややかために茹でれた中太麺ストレート麺で、噛むとブツンと切れる快感があり存在感がある。具はきざみ葱とメンマ数本、海苔1枚、ホロホロのチャーシュー1.5枚。スープは飲みやすく実に美味しい。節系のやや鋭い味わいを豚骨出汁がいい感じにまろやかにしているような。豚骨出汁の甘さがやや勝るような。魚介豚骨はこのバランスがとても難しいんだよ。魚介が強すぎると前述の通りすぐ飽きが来るスープになってしまう。卓上の薀蓄には店主が「毎日食べられるラーメン」を追求し完成させたのだと書いてあった。確かにじんわり来る。日本人の味覚の最大公約数に限りなく合わせたような一杯だ。朝から何も食べずに歩き回ったという事もあるが、スープ一滴残さず完食。しかも「このスープ一滴残してなるものか!」と思いながら丼を垂直にして飲み干したよ。魚介豚骨ってやっぱり美味い。もちろん大満足で支払いを済ませて店を出た。外には変わらず20人くらいの行列があった。
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