日陰賛同
今月18日、川崎市幸区南加瀬という辺鄙な場所に面白そうなラーメンを提供する店が開店した事を知り、定時退社日を利用して会社帰りに訪問してみる事にした。一度武蔵小杉に出てからバスで向かう事にした。今はスマホのマップで現在地と目的地を入力すれば電車とバスの乗り継ぎまですぐ教えてくれるので便利になったものだ。早出の時差出勤の定時退社日だったので店に到着したのは夜営業開始の30分も前だった。店名は「ラーメン日陰」。何かドラマ性を感じる店名。ネット情報によると元々『大勝軒』が入っていた店舗だったそうだ。シャッターは下の方が少し上がっていて明かりが見え「準備中」の札が出ていたので臨時休業の心配はなく定刻には営業はしてくれるだろう。とは言えこんな場所では時間を潰せるような場所もないので、誰もいない店の前でipodに頼って待つ事にした。開店15分前になると後ろに2人組の後客が来た。開店10分前に30代くらいの男の店主がシャッターを上げ札を「営業中」に変えてくれた。これは助かったよ!ネガティブな屋号を付けた男の店主はやっぱりどこか声はやや聞き取りづらく物静かで、どちらかと言えば客商売には向いていないような印象を受けた。他に店員はいないので一人で切り盛りしているようだ。広めの厨房の周りにL字型カウンター7席のみ。仕切りはない代わりに席間隔は広めに設置されている。口頭で注文。料金後払い。後客は2人追加し4人となった。
『海老ワンタンメン』 900円+『大盛』 50円+『生姜丼』 100円=1050円
この店のラーメンの面白いところはスープのベースは塩味で、50円追加で「濃口」に変更出来るのだが、それは醤油味になるという事らしい。また同額で「辛口」にも出来てこちらはラー油味だという。とても正直で面白いシステムだと思う。初訪問という事で今回は基本の塩味を注文。そうなると塩スープには海老ワンタンは合いそうだなとこのメニューを注文した。さらに情報提供いただいた方のオススメでサイドメニューの生姜丼も合わせて注文した。
こういう一人で切り盛りしている店は提供されたと同時に支払いを済ませた方がお互いに良いのではと考えているので、我は提供完了と同時に店主にお釣りなしの代金を支払い店主も受け取っていくれた。スープは鶏清湯の塩スープにいりこ、つまり煮干しの出汁を合わせているそうだ。スッキリと上品な味わいながら後から旨味がじんわり来る。具はきざみネギと青ネギの小分け切り、脂身もしっかりあるチャーシュー3枚、ゴマ油で味付けたプリプリ食感の海老ワンタンが3個。やっぱり海老ワンタンにして正解!このスープにベストマッチしている。
そしてもう一つこの店のラーメンが面白いのは麺!こういうスープのラーメンにはたいがい極細ストレート麺を合わせるパターンが多いが、「そんな決まりはない!」と言わんばかりの極太平打ち麺!この麺を存分に味わいたくて初訪問ながら大盛り注文したのだ。滅多に見ない特徴的な麺!口の中に入れるとクチュクチュッとした面白い食感!食感というのはネット情報では知ることが出来ず、実際食べてみないと理解できない。それを実感させてくれる麺だった。こちらも大盛りにしておいて大正解だ。
合わせて頼んだサイドメニュー、生姜丼。生姜丼って書いてあるからおろし生姜がかかったご飯か、紅生姜がのったご飯なのかなと思っていた。なにせ100円だから。そうしたら挽き肉を使った生姜焼きだった。店主がフライパンで焼いていたのは何だろうと思っていたらこれだった。挽き肉の脂と生姜のサッパリ感の合せ技でご飯がススム。こりゃーイイ!家でも作ろうかな。
ラーメンもサイドメニューも美味しくて大満足!でもそれ以上にこの店のスタイルがイチイチ我のツボを押してくるんだよ。白地に黒字でラーメンと書かれたシンプルすぎる看板。カウンター席のみでテーブル席無しの客席。券売機なし、壁に木札で書かれたメニュー表。基本のラーメンは800円とやや高価だが、麺大盛50円、ごはん50円、生姜丼100円、更に加えて味変50円、味玉無しというメニュー構成と価格。余計な薀蓄はか書かず、流行りにのるとか売る為の戦略とかは意に介さない姿勢。かと言って変に力んでオリジナル性を出そうと奇をてらって個性的なものを提供しているわけではなく、周りが何言おうが「自分はこれでいい」と納得してこの一杯を出しているんだという姿勢が伝わってきて、すごく共感してしまった。後客が立て続けにがメニューにない「チャーシューワンタンメン」を頼んでいたが、店主は静かに「すみません、出来ません」と断っていた。融通が利かないわけではなく、一人で切り盛りしていく為の方法なのだろう。本当に融通が利かない人間なら客が待っているから定刻より前倒しで店を開けてくれるなんてしないよ。我は手料理などほとんどしないから本当に空想の世界なのだが、これだけラーメン食べ歩きをしていると「もし自分がラーメン店を開くとしたら」という妄想をする事がある。この店は我が理想とする店に一番近い店かも知れない。屋号は流石にネガティブ過ぎるかなとは思うけど。個性的な店なので賛否両論巻き起こる可能性はあるが、我は圧倒的賛同しかない。勝手に妄想して店主にシンパシーを感じてしまっているが、自家製麺してるようだし、あんな上品なスープを作れるのだから相当な腕前の凄い人なのかも知れないけどね。我がスープまで完飲完食して丼をカウンター上に出し「ごちそうさまでした」と挨拶すると、店主は空になった丼を見て僅かに微笑んで「ありがとうございました」と言ってくれた。その微笑みは本当に嬉しそうだった…ように感じた。場所に難はあるが「濃口」も体験してみたいので早々に再訪問したいと思う。
バスで川崎駅まで移動し家路についた。
リンクありがとうございます。
早速行かれたのですね、流石です!
先人様の生姜丼、遠目に表面が茶色く見えたのですが、挽肉を使った生姜丼とは!
これは万難を排してでも週末に行かねば。
ラーメンフリークの方が直ちに再訪希望するのもわかりますね。
開店時間前に開けてくださったり、店主さん素晴らしいですね。
次回訪問時、忙しそうでなければ修行先、あるいは独学なのかお聞きしたいです。
投稿: ryu3星人 | 2021年1月28日 (木) 06時10分
ryu3星人さん コメントありがとうございました。
ご紹介いただいたのでとても良い店に巡り合う事が出来ました。
ラーメン店主は「好きなラーメンで成功したい」とか
「憧れたあの店のようなラーメン作ってみたい」とか
色々な動機でこの世界に入ってくるのでしょうが、
こちらの店主は修行先はどうあれ
「自分のラーメンが作りたい」という純粋な気持ちが感じられた気がしました。
早くもあのラーメンの醤油味Ver.を食べたくて仕方がありません!
投稿: いぬ吉 | 2021年1月28日 (木) 06時55分
ryu3星人さん 貴重な情報を提供いただきありがとうございました。
情報収集力とネットワーク、流石ですね!
都内のお店の情報は最近とんと疎くなってしまいそのお店の事も知らなかったのですが、
やはり店主は凄腕の職人さんだったようですね。
すぐ見つかって行列店になってしまいそう…。
ラーメンは今まで以上に麺の比重が大きくなる時代に入るのかも知れませんね。
投稿: いぬ吉 | 2021年1月28日 (木) 18時52分