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2020年8月 9日 (日)

博多源流

我は全国のご当地ラーメン巡りを通じて、ひとつの料理のバリエーションの広まりとその変遷を追っている。おのずと各々の地麺のルーツを追い求めていく事になっている。自分の足で全国を歩き回って自分の目で見て、鼻で匂いを感じ、舌で味わって確認する。大げさに言ってしまうとそれが我のここ十年以上ライフワークとしている事だ。しかし前々からそのルーツが未だにわかっていない有名なご当地ラーメンがある。「博多ラーメン」だ。「久留米ラーメン」はよくわかるんだよ、九州豚骨ラーメンの源流として、その生まれた経緯はよく語られているから。また「長浜ラーメン」も良く分かる。市場で忙しく働く人達向けに極細ストレート麺と替え玉システムが生まれたのは有名な話だから。しかし「博多ラーメン」となるとはっきりしない。大都市福岡だから、九州の中ではラーメンというものがいち早く広まったという事は想像出来る。「久留米ラーメン」より早くに。つまり今の豚骨ラーメンが広まる以前にだ。「昔の博多ラーメンというのは透明なスープだったが、後発の長浜ラーメンに駆逐されて博多ラーメン=長浜ラーメンになっていった」という話は聞いた事がある。その程度の知識止まりだった。

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ある日インターネット上で「博多・長浜・久留米ラーメンの違いはどこにある?」という記事を見つけた。インタビュー形式の記事になっていて、答えているのは『大砲ラーメン』二代目社長の香月均史氏だった。内容はとても興味深いものだった。香月氏は「現在においてもはや博多・長浜・久留米各々のラーメンは線引きは不可能になっている」と語っている。福岡県という狭い地域の中の事なので互いに影響し合っているからだろう。そもそも久留米で初めて長浜ラーメン式の替え玉システムを始めたのは『大砲ラーメン』だという話で、導入当初は久留米ではかなり反発があったらしい。でも結局久留米でも替え玉は広まっていった。それは理解出来る。だって既に全国レベルでご当地ラーメンの融合は起きているから。そうではなくて我が知りたいのはそのルーツの方だ。

そして香月氏はいよいよ博多ラーメンのルーツを語った。「博多は澄んだスープと白濁したスープの2種があった」と。白濁したスープの方のルーツは昭和21年創業の『赤のれん』だそうだ。一方の澄んだスープの元祖の方は『三馬路』という屋台で既に閉店してしまったという。しかし香月氏は「今も三馬路のラーメンを味わえる店がある」と続けた。え!今も味を引き継いだ店があるの?!記事はそのままその味を引き継いだ店『博多うま馬』社長へのインタビューに続いていた。

調べたところ『博多うま馬』は現在福岡に2店舗、そして東京駅に1店舗、そしてなんとシンガポール、タイ、フィリピンに各2店舗出店展開と結構手広く展開しているグループだった。ラーメン専門店ではなく、モツ鍋、馬刺し等も扱うラーメン居酒屋という形態で営業しているようだ。その社長が語るルーツは、昭和13~15年頃、上海から福岡に戻ってきた今はなき『三馬路』の屋台の店主が中国で食べた麺料理を再現する事から福岡最初のラーメン店(屋台)は始まったそうだ。最初は鶏ガラでスープを作っていたが、戦前なので食料の調達が困難になり豚骨を使い始めたのが博多豚骨の始まりだと語っている。ガスなどはなく練炭の弱い火力と鍋で炊いていたので白濁などは起こりようがなく半透明な豚骨清湯スープだったそうだ。そして麺は昔から加水率の高い平打ち麺を使っていたという。確かに『赤のれん』『八っちゃん』も福岡の老舗店はどこも平打ち麺を使っていた。その『三馬路』のラーメンを食べて感激したのが社長の叔父で、社長の父を誘って『三馬路』で修行してその後『五馬路(うまろ)』とい屋号で店を引き継いだそうだ。更に父の元で修行した社長がその味を引き継いで現在の『博多うま馬』として独立した、という流れのようだ。

こうして今回の旅での重要ポイント最後の4店目にして我が最重視していた『博多うま馬』本店格の祇園店へと向かう。店への到着は12時半くらい。開店予定時間から30分弱経過した頃だ。厨房には男の店員2人。厨房前に一列のカウンター8席。2階には宴会場があるという。前客無し後客1人。口頭で注文。

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博多うま馬 祇園店 『源流博多ラーメン』 650円

目的の『三馬路』から引き継がれているという源流博多ラーメンを注文。麺は多加水平打ち麺。現在の博多ラーメンの認識で食べるとかなり違和感を感じるくらい特異だなーと感じる。具は青ネギの小分け切り、きくらげの細切り、もやし、さっぱりとしたチャーシュー2枚。具は時代に合わせて変えているように感じた。そして白濁はしておらず一見鶏油っぽくも見える半濁したスープ。一口飲んだ時「ごぁあ」と叫びそうになったくらいインパクトのあるものだった。醤油ダレも豚骨も濃い!原初の博多ラーメンだから勝手に薄味なんだろうなと思っていたんだけどとんでもない。紛れもない豚骨強めのものだった。豚骨の血抜き灰汁抜きを丹念にしてから、調味料など加えずシンプルにスープを摂っているそうだ。これは今まで食べた事がないラーメンだ。博多ラーメンは久留米や長浜の影響を受ける前から紛れもない豚骨ラーメンだったんだ。博多ラーメンのルーツを知れた事とそのルーツに近い一杯を食べる事が出来て満足だ。これは東京駅にあるという店にも行ってみたくなった。達成感を感じながら支払いを済ませ退店した。

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