小倉一平
小倉という街は門司に比べて大きな街ではあるが、福岡に比べるとどうしても垢抜けない印象がある。今やモノレールが頭上を走る未来的な町並みだけど、地面に立ってみれば変わらず昔ながらな街角が残っていたりする。良い言い方をすれば庶民的、ずばり言っちゃうとどこか下品さを伴う街だ。かつては太平洋ベルト地帯と言われた中に数えられた日本有数の工業地帯、八幡製鉄所を中心とした北九州工業地帯の街だったからね。そういう労働者がいた街には、いい味わいの老舗ラーメンがあるものだ。それは博多とは違う種類の北九州のラーメンだ。事前の調査で小倉駅のすぐ近くに味わい深そうな老舗ラーメン店を見つけた。今夜の宿泊地の天神へ急いで戻らなければならない理由もない。立ち寄ってみる事にした。
特急ソニックに乗って行橋から小倉に戻ってきたのは14時半くらいだったかな。改札を抜けて駅から徒歩3分ほどの場所に昔ながらのアーケード商店街があり、その入口にあるのが昭和32年創業の『一平』本店だ。この店構え、この店先まで漂ってくる豚骨臭、好きだなー。早速暖簾を割る。中途半端な時間だったから店主は店前で煙草を吸っていたが我の入店と同時に厨房に戻った。だから先客ナシ。女の店員1人のみ。奥に長い店内で一列15席のカウンター席。2階も客席になっているようだ。後客は1人だけ来た。我は着席してメニューを見る。
このメニュー表だけでもいい味わいが出ている。何スープ魅力って。普通のラーメン以外にも味噌やカレー、冷やし中華そば、ちゃんぽんや餃子、ヤキメシや野菜炒めまであるしどれも格安。セットメニューまである。まだ食べてもないのにこの店に通い詰めたくなった。
しかし食べ歩きの旅の最中なので基本の一杯を注文。麺のかたさなどの好みは聞かれなかったな。でもそれがこの店だとそれがいい感じ。すぐに提供された。麺は細麺ストレートでこの茹で加減がいい感じ。やたらバリカタするのものではないと教えられた。具はきざみねぎ、きくらげの細切り、チャーシュー3枚。彩り的に寂しかったので、卓上で山になっていた紅生姜を投入。店前に漂っていた豚骨臭から想像するより意外とあっさりした豚骨濃度だったが、しっかり出汁の味わいが深い。「豚骨の出汁」ってこういう味わいなんだなあと思ったほど。妙なしょっぱさも無い。美味い。この一杯がこの値段で食べられるなんて、今が令和の世だとは信じられなくなったほどだ。大満足で支払いを済ませ退店した。
すぐ小倉駅に戻ったら何と15時前の新幹線に乗車することが出来た。大幅に予定を前倒しして福岡へ戻れた。
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