希望本舗
最近「東京ラーメン系譜学」という本を購入した。東京ラーメンの源流『ホープ軒』の系統、町中華ラーメン、完全に下火になってしまったチェーン系やフランチャイズ系、環七ラーメン戦争のその後など、東京ラーメン史を追った本。我はこういう本を長年待っていた節がある。世のラーメン評論家と言われる人達には常々「新店ばかり追わなきゃならない背景を理解はするけど、あなた達は別にやらなきゃならない事があるだろう?」と思っていたよ。まさか令和の時代に入ってこういう本が発売されたのは嬉しい誤算だった。
この本に触発されてまず興味を駆り立てられたのが「ホープ軒」の系統だ。根岸に『八王子ホープ軒』が開店した時にも、背景がよくわからなかったくらいだから、今我が掘るべきラーメンはここだろう。折しも『三鷹の森ジブリ美術館』のチケットを予約して本日吉祥寺に行くことは決まっていたので、当日の昼はホープ軒系統の連食にする事も合わせて決定。この歳になると「明日が楽しみ」となる事がめっきり減るのだが、昨夜は久々にその気持ちになる事が出来たよ。
『三鷹の森ジブリ美術館』を出た後井の頭公園を通って吉祥寺駅方面へ歩を進めた。馴染みの井の頭公園も三鷹側から向かったのは今回初めてだったので新鮮な気持ちで歩く事が出来た。駅を通過しサンロード商店街へ入り横道に逸れると黃地に赤文字の看板が目に飛び込んでくる。ホープ軒系の大元『ホープ軒本舗』だ。本によると創業者難波二三夫氏が戦前から『貧乏軒』という屋台を引いてラーメンを売っていた事から始まり、戦後『ホームラン軒』として再出発。好調に店舗を増やしたものの戦後復興の区画整理の為撤退を余儀なくされた。そこから新たなスタートを切った時に『ホープ軒』に屋号を変えた。更にこの時ラーメン屋台の貸し出しも行ったそうで、「ホープ軒の屋号とラーメンを手に入れたら儲かる!」と夢見た志願者によって都内にホープ軒の屋台が溢れた時代があったそうだ。その中には千駄ヶ谷『ホープ軒』、『土佐っ子』、『香月』といった、後に背脂チャッチャ系ブームを牽引した店の店主がいた。これがホープ軒系統の始まり。この吉祥寺の店舗は昭和53年(1978年)から続いていて今は長男の難波公一氏が店長になっている。大塚駅前に支店があるそうだ。東高円寺付近の環七沿いにあった杉並店は2年前閉店してしまったようだ。この本店に我は2016年6月4日に訪問して以来だ。珍しく店前に行列は無く待ちなしで入店出来た。入口の券売機で食券購入。あーとうとう一杯700円になってしまったか…。厨房には女の店員1人と男の店員2人。空席は僅かながらあって座ることが出来たが後客が続いたのですぐ満席。我がラーメンを食べ始める頃には店前には7,8人の行列が出来ていた。我はタイミングが良かったんだ。
ホープ軒本舗 吉祥寺本店
『中華そば(麺かため)』 700円+『ニンニク(シングル)』 80円=780円
普通の状態だと麺が柔らかく味もパンチに欠けていた記憶が残っていたので麺かため指定ニンニクシングルを追加。麺は細めの中太縮れ麺。大盛りが標準なので結構なボリューム。具は薬味ネギ、茹でもやし、海苔1枚、赤身かためのチャーシュー1枚。背脂は僅かで白濁した豚骨醤油スープ。最初は澄んだ醤油だったが、炊きすぎて白濁してしまったスープを一か八かで提供したところ評判が良くて現在に至るそうだ。博多豚骨や和歌山ラーメンと同じ偶然から始まるシンクロニシティ。トッピングのおろしニンニクは青森産で、卓上に無料で置かないのは品質を低下させない為だという。おかげでこともすれば物足りなさを感じてしまう老舗の一杯をパンチのあるものに仕上げてくれた。トッピングして正解。このラーメンには味玉よりニンニクだ。満足の一杯。これが東京源流の一杯なんだなー。令和元年の年末にこの一杯を食べる事が出来て幸せ。ここから我のホープ軒巡礼の旅が始まる。
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