利尻地麺
我が全国地麺巡り行脚を終えてしばらくたった2018年3月1日。新横浜ラーメン博物館に見知らぬ新たな店が入った。店の名は『利尻らーめん味楽(みらく)』。創業は2007年というからそれほど古い店ではないが、店主は2代目に代替わりしている。地元の特産品で高級食材でもある「利尻昆布」を地の利を活かして惜しげもなく大量に使って摂った出汁から作り上げたスープの一杯は、ミシュランのビブグルマンにも選ばれたという。新横浜ラーメン博物館も「日本一行く事が困難なラーメン店」と、我にとっては挑発的な一文で煽りを入れてくる。新横浜からだと飛行機とフェリーを乗り継いでも8時間かかると。そんな事を書かれると我の心に火をつけてしまうではないか。
そしてこの10連休というまたとないチャンスを使って、その『味楽』本店に訪問する事を決意した。この店に訪問しラーメンを食べることが今回の旅の最重要ミッションだ。訪問に8時間というのはシーズンである6月から9月の間、飛行機もフェリーも本数が一番増便した時期の話。しかもどちらも順調に運行して初めて言えるのであって、シーズン前の5月となるとそう都合良く乗り継ぐ事も出来ない。しかもこの店の営業時間は昼11時半から2時までのたった2時間半。この営業時間に訪問を合わせるとなると更に困難な為、わざわざ利尻島に2泊する事にしたのだ。それでも我は不安だった。この10連休というタイミングで、例えば物産展出店の為臨時休業とかありはしないかと。そうなってしまったら3泊4日の時間と金がごっそり無駄になってしまうのに等しい。我にとっても過去最大のハードルの高さを感じている地麺訪問の旅。考えてもしょうがない。運を天(店)にまかせて旅に踏み出した。
昨夜とはうって変わって好天に恵まれた旅行3日目。既に前日に利尻島に上陸を済ませている。離島という困難な立地にも関わらず常に行列が出来ているという情報も耳にしている。ましてや今はシーズン前とはいえゴールデンウィークの最中。訪問できたとしてもその行列待ちの為営業時間に店に到着出来たとしてもラーメンにありつけるのは何時になるのか読めない。そうすると前乗りは必須になるし、当日帰りのフェリーにも乗船出来なくなる可能性もある。その為の前日上陸し、さらに島に2泊することにしたのだ。全てはこの店訪問達成の為だ。もう開店時間の1時間半以上も前の朝9時50分頃には店に到着していた。流石に店前には誰もいない。店の駐車場には我のレンタカーのみが駐車。我が本日一番乗り。とにかく臨時休業されたらたまらないので、そんな貼り紙が出ていないか早めに確認する必要があったからだ。とりあえずそんな貼り紙はされていない。定休日は昨日の木曜日。問題なければ今日営業してくれるはずだ。まだ真っ暗な店内をよく目を凝らして見てみると人影が動いているのが確認出来た。10時をまわると他の客がパラパラと集まりだした。噂は本当だった。開店1時間前の10時半になると店員が順番待ちの名簿を出しに入口に現れた。これで本日営業するのは確実だ!嗚呼、この高い旅費と貴重な時間を無駄にすること無く実を結ぶ事が出来る!安堵と嬉しさがこみ上げガッツポーズをしたくなる気持ちを必死に抑えて、名簿の一番上の欄に名前と人数を記入した。店員は「11時15分くらいまでに店に戻ってきて下さい」と言ってくれた。1時間行列で待つ事から開放される!その間すぐ近くに海があるので浜に出てみたり、そのまま沓形岬公園で観光を楽しんだ後、11時10分頃に店に戻ってきた。その頃には店の周りに大勢の人。島の景勝地でもこんなに人が集まっているのを見た事がなかったので驚いたよ。11時20分、定刻より10分前倒しで暖簾が出された。それと同時に名前を呼ばれたので最初に入店する。店内はアットホームな感じ。厨房にはおばさん店員ばかり5人ほど。中には赤ちゃんを背中に背負っている人までいた。入口付近に4人がけテーブル席が4卓があり、そこに他客と相席となった。奥には座敷席があるようだが中は窺い知る事が出来なかった。食べログによると全44席だとか。冊子メニューを見て口頭で注文するとピンク色の注文札を渡される。これを食後差し出して料金を支払うシステムのようだ。
利尻らーめん 味楽 本店 『塩らーめん』 800円
筆頭の焼き醤油や味噌もあるが、昆布出汁の威力が一番わかるのは塩!という我の感で塩を選択。トッピングのとろろ昆布も合わせて注文。麺は北海道らしいレモン色の中太ちぢれ麺。我はこの麺が大好きだ。具はきざみネギとメンマ数本、細切りきくらげ、海苔1枚、脂身の多い大きめのトロチャーシュー1枚。あれ?以前はもやしと昆布が付いていたはずなのに、新横浜の店と合わせてきくらげと海苔に変えたようだ。白濁したスープはじんわりと昆布から出る旨味成分がばっちり感じる事が出来る。そしてぷりぷりの麺に、そのスープの旨味成分を吸って絡みついてくるトッピングのとろろ昆布。美味い!キッチリ汁一滴残さず完食。
+『焼き醤油らーめん』 850円+『とろろこんぶ』 100円=1750円
我はここの店でラーメンを食べる事を目的として遠路遥々やって来たのだ。塩一杯で終えれるはずがない。筆頭の焼き醤油も注文したよ。相席した客からは呆れられたが、店員は慣れたもので「食べ終えてから次をお出ししましょうか?」と聞いてくれた。ありがたかった。塩の方が味が淡いと思って塩先行で、焼き醤油は後にしてもらった。濃い醤油色をした、これまたいい顔をした一杯が登場した。麺や具の構成は塩と同じ。焼き醤油というだけあってニンニク入ってんのかな?と誤解したほど香ばしい味わい。そして連食したのでわかったのだけど、やっぱり看板の醤油の方が昆布出汁の旨味を感じる。不思議だなあ。かねてより「本店と集合施設に出店しているラーメンの味は別物」と我は言ってきた。それこそが我が現地に行って食べ歩く原動力だから。そして今回もそれが証明された。本当の味は本店に出向いてこそ知る事が出来た。そしてそれは史上最高難度の『らーめん味楽』本店を攻略出来たという事である。2杯目にも関わらずこちらも汁一滴残さず完食!大満足だ!今までの苦労が報われたし、これからの残りの旅時間も有意義に過ごせる。
人がいっぱいたむろしている『味楽』の駐車場から車を出し、利尻山5合目にある見返り台園地に向かった。
いぬ吉さんの代わりに、ブログみてガッツポーズしてしまいました!(笑)
投稿: tantin | 2019年5月 6日 (月) 23時39分
tantinさん、ガッツポーズありがとうございます!この時にフラレてしまったらリベンジは容易ではないのでかなり心配していたのですが、お陰様で難関店訪問達成出来ました。
投稿: いぬ吉 | 2019年5月 8日 (水) 05時55分