失態旅立
11月22日は期初の時点で定めた休暇なので今日から我は4連休。よくぞここまで耐えたよ我。この期間を利用し我は2泊3日の長崎の旅に出る事にした。長崎には5年半前地麺巡りとして訪れたが、その時は地麺のことしか頭になくて滞在時間はたった4時間弱だった。流石にそれは滞在時間が短かすぎたので、それから1年半後くらいに長崎に再訪しようと計画した。理由はまだ地麺のことが頭に残っていたから。長崎にはラーメンの親戚みたいな「ちゃんぽん」という存在がある。その元祖の『四海楼』には訪問したが、長崎には「長崎ちゃんぽん」だけではなく、「平戸ちゃんぽん」、「小浜ちゃんぽん」といった別種も存在するという。だからといってラーメンとは異なる各地のちゃんぽん巡りにまで手を出すのかといえばそれも違う気がして躊躇していた。だけど長崎には軍艦島とか佐世保バーガーとか行ってみたい要素はいくつもあった。だから旅行ガイド本だけは今まで何度か購入しては結局行かないというのを繰り返していた。これほど先延ばししていた旅行計画はかつて無い。先月半ばには旅 のスケジュールをある程度組み、先月末には航空券と宿の手配も済ませた。4年越しくらいでようやく長崎旅行が実現することになる。…そう思っていた。
朝5時に家を出て横浜駅からリムジンバスに乗って羽田空港に到着したのは6時半前。飛行機が出る40分くらい前頃かな。ANAなので第2ターミナルだ。旅への期待に胸膨らませ航空券を発券する為カードを出そうとズボンのポケットに手を伸ばした。すると…財布が無い。ぺったんこだ。えっ!…事実が飲み込めず軽くパニックになった。盗られた?いや、そんなはずはない。リュックの中を全て出して探すが見つからない。自分を落ち着かせて考えてみる。そうだ、リムジンバスに乗る時に往復チケットは買っていたのでそれまでは財布は手元にあったのは確実。という事はバスの中で座りながらズボンのポケットに入れたつもりで入れて無かったんだ!旅に邪魔にならないよう財布の中の不要なカード類を家に置いてきたので薄くなっていつもと感覚が違ったのも要因だ。急いで空港の外のバス乗り場に行ってバスの到着案内係の京急の若い係員に「バスに財布を忘れた」旨を伝えた。座った席や財布の形状を説明するとすぐ連絡を取ってくれた。もし見つからなかった場合、家に帰ってカード会社へ連絡して使用停止を連絡したりしなければならなくなる。楽しみにしていた今回の旅行は諦めざるを得ない。誰が悪いわけでもなく我がドジを踏んだのだから仕方がない。でもその時はもうかなりのショックで眼の前が真っ暗になった。我って打たれ弱いなーと自覚した。でもホントに楽しみにしていたからね…。固唾をのんで係員の連絡のやりとりを見つめていた。…すると財布が見つかったとの返答があった!良かった!!よく考えれば乗ったバスはこの第2ターミナルが終点。他の客は全て降りた後だったので折返し地点の車内チェックで見つかったという。そして折り返してこのターミナルに来るバスに渡して持ってきてくれるという!何たる奇跡!とりあえずANA職員に事の顛末を話して遅れるかも知れないと連絡を入れてからバス停へと係員と向かう。数分後バスは到着し我の財布を無事受け取る事が出来た。本当にあの若い京急の係員には感謝の言葉しかない。親身になって迅速に動いてくれて奇跡を起こしてくれたのだ。我よりずっと若いけど、あのような対応が自分で出来るかと思うと疑問だ。深く深くお礼を言って空港チケット受付へ急いだ。
しかし、というかやはり予約していた長崎行きの便に乗る事は叶わなかった。結構駆けずり回ってみたんだけどね。奇跡の財布返還があったというのにその時の我は失意のどん底。もう金の問題ではないので出来るだけ早く長崎に到着出来るかで頭はいっぱい。新規航空券購入の長い長い行列に並ぶ。この約25分間という順番待ちの時間は地獄のような時間だった。ようやく自分の番がまわってきた頃には、次の長崎行きの便の出発時刻が30分くらいに迫っていた。ドキドキしながら次の長崎行きの便のチケットを希望した。すると2席だけ空いているという。また奇跡が起こり、当初の予定から80分遅れになるが、次の長崎行きの飛行機に乗れる事になった。長崎に行ける!風前の灯のように消えかけていた長崎への旅を改めて始める事が出来る!二度の奇跡を目の前にして本来ならそのように喜ぶべきなのに、我の顔は全然晴れない。当初予定していた今日の旅行計画はほぼ白紙になって練り直す事で頭がいっぱいだったからだ。無事離陸した長崎行きの飛行機の中でも、ただただその事しか考えていなかった。融通が利かない自分が嫌になる。でも諦めたくなかった。
午前10時過ぎに長崎空港に到着。本当に長崎の地を踏めたんだ。旅を始める事が出来て嬉しい。しかし喜んでいる暇はない。最初の目的地として設定した平戸訪問を諦めたくは無かった。今回の旅はレンタカーは使用せず公共交通機関での移動を予定していた。長崎空港から平戸への直行バスは存在せず、一度佐世保に出る必要がある。当初の計画では佐世保へ直行する乗り合いジャンボタクシーを予約してあったのだが当然ながら予約は無駄となってしまった。だから途中ハウステンボスを経由してしまう高速バスを使うしかない。しかしこれだと佐世保から平戸行きのバスに乗り換える時間があるか本当に微妙なところになってしまうのだ。平戸行きのバスの本数自体が少ないから、乗り逃すと平戸到着は夕方になってしまうかも知れない。そうしたら平戸に着いても何も出来ないまま今夜の宿泊地長崎にすごすごと帰ってくる事になる。そんな事態は避けたいのだ。焦った気持ちで高速バスに乗車。しばらくするとバスは大村湾の海岸沿いを走るようになった。その海と、少しずつ広がる青空を見ている内に、ようやく旅を始める事が出来た実感が少しづつこみ上げてきた。あとはバスが少しでも早く佐世保に到着するのを祈るしかない。1時間45分かけて佐世保バスターミナルに到着出来たのは12時26分。平戸行きバス出発予定時間の5分前をきっていた。急いで窓口に平戸行きのチケットを購入を希望した。すると窓口のおばちゃん店員は急いで窓口からこちらに出てきて券売機に我を案内し料金を教えてくれた。チケットを買うとおばちゃん店員は正面のバス乗り場を指差し「このバスに乗ってください!」と教えてくれた。そして我は平戸行きのバスにかろうじて乗車する事が出来たのだった。ここでまた奇跡、また感謝だ。西肥バスのおばちゃん店員、本当にありがとう!バスは定刻どおり佐世保を出発し平戸に向けて動き出した。初めての佐世保の街の風景を眺めながら旅への期待に再び胸を躍らせる事が出来た。その事がたまらなく嬉しかった。
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