室蘭地麺
早朝5時前には家を出て羽田空港へ向かう。6時50分発の飛行機に乗り、新千歳空港に到着したのは8時半前。何故こんなに早く移動する必要があったのか。それは、ここから電車を乗り継いで道南、室蘭の地に向かわねばならないからだ。
快速エアポートで一旦南千歳に出て特急列車を待つ。その間ホームで北海道の空気を感じた。ホームの周辺にあるちょっとした白樺並木を見ていると「ああ北海道に来たんだなぁ」とじんわり実感する。空は雲が多いものの陽光は意外と強い。体感気温は横浜より流石に涼しい。それでもシャツの袖を捲って半袖にして心地良い程度。我からすれば清々しい。
特急北斗に乗って東室蘭へ出た後、室蘭本線に乗り換え数駅、ようやく室蘭に到着したのは10時半前。室蘭本線の終着駅になっているどん詰まりの場所。駅前も大きなロータリーが広がっているが車も少ない。少し歩くと駅前に飲み屋やコンビニはあるが凄く閑散とした印象。昔は製鉄業で栄えた町らしいが、今はそれが無くなり人口減少に歯止めが掛からない状態らしい。観光資源もこれといってないので観光コースからも外れている。目的をもって訪れなければまず訪れる機会はないだろう。そんな室蘭に我が訪れる事が出来たのは地麺巡りのおかげだ。
最初の目的店は、この地で屋台から昭和10年に創業した元祖室蘭ラーメンを名乗る老舗、『清洋軒』だ。この店は駅から結構離れた場所にある。早めに到着したので、一番遠いこの店から訪問し、開店時刻ちょうどに入店することにした。室蘭滞在時間は限られている。時間は有効に活用したい。のんびりした街並みで、道幅は広いけど車の往来や人通りは少ない。下調べした情報では『清洋軒』は駅から徒歩20分かかるとあったが、実際は10分ちょっとで到着出来た。住宅街の中にあり、近くに小学校と保育所がある。平日なので子供たちの声でにぎやかだ。到着したのは開店5分前。暖簾はまだ出ていないし、他に待ち客もなし。店前で待っているとほぼ時刻通りに初老の店主が暖簾を出しに来た。本日最初の客として入店する。古いけど清潔な町のラーメン店といった佇まい。厨房には先ほどの初老の店主夫婦2人。2代目店主とのこと。厨房周りに変形L字型カウンター8席と4人がけテーブル席1卓。後客老夫婦2人。口頭で注文。
『特製塩らーめん』 750円
メニューには醤油や味噌もあるが、こちらは塩が有名なのだそうだ。塩で通常より100円高い特製を注文。麺は無添加自家製麺を謳っている。もちっとしながら歯ごたえも感じるアルデンテ状態の中細ちぢれ麺。具は薬味ネギ、ほうれん草、メンマ、紅白逆転のナルト1個とお麩1個、半味玉、トロトロのチャーシュー2枚。透明に見えるスープは若干濁りがある。基本は昔ながらの塩スープだが、魚介や昆布から摂ったという出汁がじんわりやって来る。これは美味い!昆布が違うのかなぁ?そして通常のラーメンとは違う特製バージョンならではのトロトロチャーシューが美味すぎる!もしかしたら過去食べた塩ラーメンの中では総合得点で首位になるかも知れない。遠征一軒目で大当たりを引いてしまった。後があるというのにほぼ完食してしまった。大満足!
店を出て海の方まで歩いてみた。なかなか味わいのある浜辺を見つけた。電信浜というところらしい。こんな景色が地元の人にとっては珍しくもない近所の海岸という事になるのだろう。北海道はいろいろ凄い。
旅行気分も盛り上がってのんびりと再び駅の方へ戻る。次の店は『室蘭ラーメンなかよし』だ。室蘭市を中心に8店舗を構える室蘭を代表する、地元で半世紀以上親しまれているチェーン店だ。残念ながら本店は閉店してしまったので、かつて本店があった場所にほど近い場所にあるという中央町支店へ入店する。店舗自体は比較的新しい様子。厨房には中年の店主夫婦2人。L字型カウンター15席と4人がけテーブル1卓。先客2人後客2人。口頭で注文。
『正油ラーメン』 650円
メニューには塩や味噌もあるが、こちらは正油が評判というので注文した。麺は中太やや縮れ麺。具は薬味ネギ、メンマ、チャーシュー3枚。黒いスープは意外と優しい味わいで結構なロースト感を感じる。旭川ラーメンとは似て非なる独特の味わい。やっぱり醤油と昆布出汁が違うのかなあ?そしてチャーシューは醤油のタレがしっかり染み込んだ歯ごたえを感じるもの。このチャーシューは美味い。満足。
さて、いよいよ室蘭での最終目的店『味の大王』室蘭本店へと向かう。ここが今や室蘭を代表する地ラーメン「室蘭カレーラーメン」発祥の店となる。但し、「味の大王」の総本店は苫小牧にあり、そっちの方が北海道カレーラーメンの発祥店。しかしながら当初カレーラーメンはメインではなく「こんなのもやってます」的な脇役メニューだったそうだ。このカレーラーメンをメインにして、「室蘭カレーラーメンの会」を立ち上げ名物メニューに押し上げたのは、暖簾分けされたこの室蘭店という事らしい。だから本店を名乗っているのだろう。寂れた商店街を通って坂を上った途中に店はあった。ともかく暖簾を割り入店。内外装とも町の中華料理店然としている。厨房には男の店員2人と女の店員1人。厨房前に一列のカウンター10席と4人がけテーブル席3卓、座敷に4人がけテーブル4卓。先客5人後客3人。口頭で注文。
『カレーラーメン』 750円
ちょうど我の座った席の前で調理してる様子が伺えた。中華鍋で具を炒めつつ、その中でカレーを作っていた。麺はかなり縮れの強い中太麺。具は薬味ネギ、もやし、わかめ、チャーシュー2枚。とろみが強く出てカレー寄りな感じで独特の色合いをしたスープ。甘口でカレーうどんと同じ味。でも縮れ麺とそのシコシコ感がカレーうどんとは違うところ。スープのとろみの強さが印象に残った。
約80分の間に3店3杯。もう腹は限界となったところで念願だった室蘭地麺巡りは終了。室蘭の代表店を一気にまわったが、そのどれもが、地元の人達が親しみをこめて「故郷の味」と言うのもわかる雰囲気の店と味を持った店だった。町おこし系とは違う素朴さがあるラーメン。室蘭に来れて良かった。
予定より早く食べ歩きを終えられたので、電車で札幌に向かう…事も出来たのだが、あえてスルーして高速バスで札幌に行く事にした。電車の特急料金分が節約出来るし、北海道の街並みをバスの車窓を通して眺めて見たかったから。
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