笠岡地麺
今回の旅の2日目は岡山県でも個性を放つ笠岡ラーメンを食する事にした。鶏ガラ醤油ベースのスープに「かしわ」を呼ばれる老鶏の肉を煮たものがチャーシューの代わりに使われているという正に鶏づくしの地ラーメンだ。岡山では豚骨醤油が一般的で明らかに系統が違い、近くに魚介系の有名な尾道ラーメンの存在があるにも関わらずその影響もあまり受けていない。何故このような現象が起きたのか?それはこの地区は昔から養鶏がさかんで安く材料が入手出来た為。徳島ラーメンや倉吉牛骨ラーメンと同じく地ラーメンは地場産業の存在が大きな影響を与えているんだなぁ。
そんな個性のある笠岡ラーメンを食す為、宮島口から広島に戻り新幹線に乗り換え1駅目の福山で下車。更に再び山陽本線に乗り換え3駅目。到着したのはほぼ正午。まず目指したのは笠岡ラーメンの筆頭店『坂本』だ。この地ラーメンの存在を知ったのは、この店がラーメン博物館に一時的に出店したのを食した事による。しかしこの店には心配な事があった。下調べしていく中でこの店は日曜定休となっているサイトと日祝定休となっているサイトがあった。そして今日は土曜日だけど密かに祝日なので祈るような気持ちで店に向かった。
見事に定休だった。これで笠岡には再訪しなくてはいけない事が決定した。
ここですぐ気持ちを入れ替えすぐ近くの有名店へ。しかしながら次の店はラーメン店ではない。三洋旅館の1階にある日本料理店『お多津』という店。天ぷら等の日本料理主体だが店主が趣味で月数回ラーメンを出していたのが評判になり今ではレギュラーメニューに。但しお品書きには載っていない。料亭らしく厨房は奥にあって見えない。L字型カウンター6席と4人がけテーブル席3卓、座敷に4人卓2つ。先客は8人、後客も続々来店。ラーメン注文の確立は高かった。
これは綺麗な一杯。定冠詞付の笠岡ラーメンだ。麺は中細ストレート。具は青ネギ、メンマ数本、かしわ5枚くらい。上には糸唐辛子。スープは表面に鶏油と白胡麻が浮く。スープは鶏のみのスッキリした出汁で醤油はやや甘めのものを使っている。歯ごたえのあるかしわは美味しい。昨日までの山口遠征で食べた豚骨醤油とは全く別のすっきりしたラーメン。同じ中国地方でもこれだけ違うのかと改めてこの地域の多様性に驚かされた。
『坂本』にふられた事でスイッチが入り当初行く予定はしていなかったもうひとつの笠岡筆頭店に行く事にしてしまった。駅前に戻り禁断のタクシーに乗車。総合卸売市場へ向かう。その中に店舗を構える『おっつぁん』という店だ。人気店だけあって店前に行列が出来ていた。3分ほど待って着席出来たが注文してから20分以上待つハメになった。厨房にはごま塩頭の店主と女の店員2人。家族経営かもしれない。厨房前に一列5席と壁側に一列7席のカウンター席。4人がけテーブル5卓。口頭で注文。
笠岡では珍しく豚骨醤油ラーメンもメニューにある。でも我は笠岡ラーメンを食べに遥々来ているので筆頭しょうゆを注文。かしわが綺麗に並んだこちらも定冠詞付の美しい笠岡ラーメンだ。麺は中細ストレート。具は薬味ネギ、メンマ数本、かしわが5枚くらい。スープはやはりやや甘味のある鶏ガラ醤油スープ。やや魚介出汁も感じる。シンプルだけど美味しい一杯。満足。
帰りは徒歩で駅まで戻る。20分くらいだったかな?途中笠岡港が高台から望めて綺麗だった。再び『お多津』の前を通り過ぎ更に進む。今回の旅の食べ納めを飾るのは青いテント屋根が目印の『中華そば いではら』だ。店主は笠岡郊外にある『一久』という店で修行したらしい。その『一久』の店主は『坂本』で修行したらしいから、『坂本』からすれば孫のような存在になるのか。早速入店。厨房には熟年夫婦と思しき男女2人。厨房前に一列6席のカウンター席と2人がけテーブル席1卓、4人がけテーブル席2卓。絵に書いたような町のラーメン屋といった感じ。口頭で注文。
メニューは並と大しかない。並注文。麺は中細ストレート。具は長ネギを斜めに刻んだものとメンマ数本とかしわ数個。スープは出汁が効いて味わいがある。3店の中で一番素朴さを感じられる一杯だった。笠岡ラーメンは個人的に鶏が好きなので好みのラーメンだった。
帰りは岡山に出てから新幹線のぞみに乗り一気に新横浜まで帰ってきた。
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