竈閉時代
10年前、第一次か二次かわからないがラーメンブームが起こった時にその筆頭として名が挙がり一世を風靡したといっていい『竈(かまど)』。ちょうどその時テレビのドキュメンタリー番組で脱サラ夫婦がラーメン店開業に向けて奮闘するというのを見た。夫が妻に「またサラリーマンに戻るのか!?」と言い、妻は黙って涙ぐむ…というシーンが記憶に残っている。支店の開店。全国のラーメン施設への参加やカップ麺化など飛ぶ鳥を落とす勢いで超有名店となった。しかしその後すっかりマスコミの話題に上がる事もなくなり「一昔前の店」という位置づけがされてしまった。そしてその『竈』が突然来月15日、10年の節目に暖簾を下ろす事が発表された。脱サラ店主が、マスコミやインスタント麺を出そうとする企業や海千山千のイベント会社等に翻弄されてしまった印象が残り哀れさも感じる。我は3年前に本店に行ったが、その時既に落ち目の印象だった。閉店の報を聞き、何だか胸に去来するものを感じ、珍しく2日続けて都内遠征する事にした。昨日と違い小雨が降る日曜日。合羽を着て最寄り駅までスクーターを飛ばす。横浜から湘南新宿ラインにのり新宿に下車。しかしここからが遠い。まず西武新宿線新宿駅まで辿り着いてから更に北へ進まなければならない。迷わず早足で歩いて10分以上かかった。新宿はまだ雨が降っていなかったのでまだ助かったが。「竈」と書かれた赤い提灯を発見。入口脇に券売機。閉店キャンペーンで値段が低く抑えられていた。木を活かした居酒屋のような雰囲気の内装。厨房は奥にあり見えにくいが男の店員が2人くらいいそうな感じ。接客係は中国系の女店員。コの字型カウンター16席。
『くんたまチャーシューメン(にぼししょうゆ味)』 790円(閉店サービス価格)
せっかくだから店人気No.1というメニューを注文。にぼししょうゆ味ととんこつしょうゆ味から味を選ぶ。スタンダードっぽいにぼししょうゆ味を選択。一時代を謳歌した幻となってしまう味を味わおうと箸をつけた。しかし感想は…煮干しというほど煮干しが強いわけではなく、かといって醤油がキリリと効いているわけでもない。ズバリ言って薄すぎる。そしてスープがぬるい。麺は中太ちぢれ麺で柔らかめの茹で加減。具は薬味葱、メンマ数本、海苔1枚、半分に割られたくんたま、釜焼きチャーシューが6枚。くんたまはそれほど燻製の香りもせずちょっと期待外れ。でもチャーシューは外側が香ばしく美味しかった。ラーメンは残念ながら終わりゆく味という感想が残った。でも時代に世間に翻弄された不器用な店主に対して同情の気持ちを禁じえず、心から「お疲れ様でした」と言いたくなった。ごちそうさま。
続いて歌舞伎町旧新宿コマ劇近くに博多にらそばを出す『熊楠』という店を狙ったのだが、店舗改装中の為休業中だった。閉店か?その脇に珍しく久留米ラーメンを名乗る黒い屋台風の店構えの店『六つ門』なる店があったので突発的に暖簾を割ってしまった。入口に券売機。奥に長いL字型カウンター12席ほどと2人がけテーブル席が3卓ほど。厨房には若い男の店員が2人。立地のせいで客の出入りが激しく常に6割の入りだった。
久留米ラーメンと名乗っておきながら豚骨臭が全くしないし麺も極細麺で、博多ラーメンと変わらない。一見こってりした濃厚白濁豚骨かと思いきや、口にするとコクがない。東京でよくある博多ラーメンの味だ。具は薬味ネギ、メンマ、海苔1枚、屑のようなチャーシュー1枚。卓上から紅生姜、胡麻、高菜を投入。後々調べたらムジャキフーズ系の店との事。
帰りは寄り道せずそのまま新宿湘南ラインを待ち帰路へついた。
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