屋久島行
いよいよ旅立ちの朝を迎えた。国内で3泊もする長期旅行など本当に久々だ。遅々として進まなかった最強といわれた台風4号がようやく通り過ぎ青空がのぞいている。良かった!…と単純に喜べない状況になってしまった。台風の影響で現地の登山口付近で崖崩れが起き縄文杉はおろか白谷雲水峡まで行けないとの情報が入ってきたのだ。詳細は現地で確かめないとわからないが、そうなったらどうしようかと心配であまり眠れもしなかった。鹿児島行きの飛行機は羽田9時半発なので7時半に家を出た。羽田空港自体は慣れているのでスムーズに乗り込みが出来た。搭乗する直前で友人達に旅立ちのメールを送信。10分遅れで離陸。千葉方面を旋回して九州方面へと向かう。途中海の色がマリンブルーからコバルトブルーへくっきり分かれているところが見えて面白かった。鹿児島空港には予定より10分早い11時5分に到着。その直前機内アナウンスで柏崎で震度6の地震が起きた事を知る。関東地方も揺れたとの事。家族が心配だ。鹿児島空港はあいにくポツポツ雨が降っていた。鹿児島市中心部へ向けてリムジンバスで移動。1200円。走っている内に雨は止んだ。50分弱で到着。出発前に調べていたコースとは違っていたのでどこで降りてよいか戸惑った。案内ではタクシーでは5分くらいと書いてあったが、その程度の距離でタクシーなど使っていられない。荷物をコロコロ引きずりながら鹿児島の街を歩く。鹿児島は道が広々としていて、やはり東京よりは蒸し暑い。ムンムンという感じだ。出港まで1時間以上あるのでここでちゃっかりラーメン店に寄る。それは別記事で。
出港45分前に港に到着し席を予約。高速船トッピーだ。女性乗務員が美人だったなー。航行中ほとんど水しぶきが見えない。ジェット水流で空中に浮いて走行しているそうだ。1時間50分くらいで念願の屋久島に到着した。あれだけ高速で進んでいたのに2時間弱かかるとは鹿児島から結構距離があるのを実感した。かなり雲が多いものの青空ものぞくまずまずの天気。気分が良い。下船してすぐ近くの観光案内センターに行く。二日目に縄文杉、三日目に白谷雲水峡に行くという予定が白紙になってしまったら、せっかくの屋久島旅行がめちゃくちゃになってしまう。観光案内センターと言ってもおばさんが一人詰めているだけの小さな案内所だった。既に一人旅と思しき女性客が質問をしていたのを聞いていると、どうやら縄文杉へ行く荒川登山口までの道が陥没して下手したら11月まで閉鎖という絶望的な話。でも白谷雲水峡は問題なさそうだ。どうしても縄文杉を見に行くのなら白谷雲水峡から登山道に入り往復13時間以上かけてなら行けるとの事。これは悩む。取り急ぎ宿で荷物を降ろしてゆっくり今後の予定を考える事にした。もう午後3時半だ。今日は観光は諦めよう。
港から10分ほど歩くと屋久島最大の町宮之浦の中心部に到着。といってもひなびた小さな港町で何があるわけでもない。でも緑の山々に包まれ中心に大きい川が流れて目の前には広大な海が広がる美しい町だ。3日間お世話になる宿は「やくすぎ荘」という民宿。河口からちょっと上った川沿いにある。玄関に入り名前を告げるとおばさんが「離れになります」との事。離れにされるのは隔離されるような感じがしてちょっと不安になる。でも部屋に案内され不安は吹き飛んだ。広くて窓に座った視線で川が一望出来る。申し分なかった。この大きな部屋を1人で自由に使えるのだ。とりあえず荷物を置き明るい内に宿周辺を探索する事にした。何といっても島では貴重な大型スーパー「Aコープ」が歩いてすぐの所にあるのは高ポイントだろう。スプライトと紅いもソフトクリームを買い町を探索に出かけた。しかし学校がある他は特に何もなくすぐ戻ってきてしまった。再びAコープで水とお菓子を買い宿に戻る。とにかく明日の予定が立たなければ落ち着かない。とりあえず縄文杉トレッキングにはガイドを依頼していたので、そこに電話で確認した。するとやはり縄文杉は中止との事。ならば代替に白谷雲水峡ツアーを申し込もうとしたが人数が集まらないという話なのでツアーガイドは無しで単独で行く事にした。かなり悔しかったので白谷雲水峡側から意地でも縄文杉を拝みに行こうという気持ちになっていた。しかし冷静に考えたら道路が陥没するほどの台風の被害があったのだ。山が深いところではそれ以上の被害が出ている可能性が高い。そんな状況で登山初心者たる自分が単独登るというのは無謀であるし、登るにしても夜も明けきらぬ早朝から登山口に向かう足も無い。かなり残念な事だが今回の旅では縄文杉との対面は諦める事にした。そうなったらスライド式に明日は白谷雲水峡に行く事にして、ようやく気持ちが落ち着き安堵した。
旅行の計画を集中して組み立て直してたらといつの間にか夕飯の時間に。共同の食堂に向かう。あれ?こんなに宿泊客がいたんだとビックリした。離れにいると静かで誰とも会わなかったのでギャップに驚く。食事はトビウオの揚げものなど豪華なもの。食べ終えてお茶を飲んでいるとおかみさんに明日の予定を聞かれた。白谷雲水峡に行くと答えると「お昼のお弁当ご用意いたしましょうか?外へ発注するんですけど。」と聞かれた。これは渡りに船だ。さっそくお願いした。ようやく屋久島旅行の歯車が回り始めた感じだ。そんな気持ちで共同の風呂へ向かう。誰もいなかったので大きな湯船をほぼ独り占め!たっぷり開放感を味わった。布団を敷いて明日の登山の準備に取り掛かる。でもテレビでHERO’Sを観戦している内いつの間にか眠りの世界に落ちてしまった。
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