八眞茂登
仕事を終え、花の金曜日。錦糸町から新日本橋で銀座線に乗り換え銀座で下車。華やかな銀座の街を歩くと週末に辿り着いた喜びを増幅させてくれる。その華やいだ通りの裏側に隠れて営業しているとしか思えないビルの裏の小さな階段の下に、今日の当初の目的の店がある。『八眞茂登(やまもと)』という厳めしい屋号。何となく敷居の高い銀座の小料理屋をイメージしていたのだが、古いビルの地下にタイムカプセルのように保存された煤けた昔からの飲食店といった雰囲気。店内の奥には野菜のダンボール箱が置かれていたり、BGMはテレビ。老夫婦が営む家族的な店だった。胡椒や薬味の容器がいちいち昭和を感じさせる、ある意味銀座らしい店。
名物『ベトナム麺』を注文。もやし、キャベツ、玉ネギ、にら等の野菜がごっそりのってボリュームがある。豚肉の細切れ、柔らかい幅広メンマ、そして酸っぱく味付けされた煮込みニンニクが大量に入っているのが特徴的。あっさり醤油ベースのスープにちぢれ細麺。変わったラーメンが食べたくてこの店を選んだが、ラーメンの前身の中華風麺料理といった感じ。サンマー麺の豪華版といったところか。だから味に関しては好みではなかった。
腹もふくれて体に熱を持ったので電車に乗る気が起こらず、煌びやかな銀座の街をしばらく歩いてみる事にした。いかにも銀座のホステスといった感じの美女や高級料理店の前で客を待つ店員、明らかに敷居の高そうな靴屋など、あまり自分と縁の無い別世界の風景を見て歩くのは面白いものだ。だがしばらく歩き進む内に徐々に大衆的な店に変化して、気が付けば新橋に着いていた。カラーが異なる二つの街をそのまま体感出来て面白かった。
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