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2013年12月31日 (火)

地麺再考

今年も今日で最後となる。今年は自分でも「狂ってるんじゃないか?」と思うくらい地麺巡りに行った。だいたい月2回ペースで行ったからなぁ。そのかいあって今年7月末の沖縄遠征で47都道府県訪問、いや訪麺を達成。この機会に全国をまわった事で実感として判った事をまとめておきたいなぁと思う。先日書いた駄文の続きだ。長文失礼!

新潟「燕三条ラーメン」は濃いめの醤油ダレに煮干メインの出汁を使ったスープに極太縮れ麺を入れ、更に玉ネギのみじん切りと大量の背脂をかけた一杯。これは地場産業である金物加工の工場で働く人達の為に生み出されたとされる。味が濃いめなのは、高温の中で力仕事をして大量の汗をかき、塩分を欲しがっている労働者に合わせての事。またゴワゴワの太麺使用で背脂がかかっているのも、新潟という寒い地域で出前を行う際に冷めてしまわぬよう、のびにくく保温効果を期待しての事だとされる。

塩っぱいと言えば代表的なものに「富山ブラック」ラーメンがあるが、これも肉体労働者向けにご飯のおかずとして食べられたので、もっと味が濃いものへ、濃いものへと要求された結果であるという。逆に甘い味へ甘い味へとシフトしたのが兵庫「播州ラーメン」だ。これは繊維産業で働く女工の好みに合わせていった結果だという説がある。また東京では「背脂チャッチャ」ラーメンが、深夜環七で忙しく働くタクシーやトラックの運転手を待たせない為、茹で置きが出来るよう太麺を使って、疲労回復と保温効果を狙って味が濃くギトギトな一杯になった。博多ラーメンは朝忙しい漁師達に素早く提供出来るように極細ストレート麺で替え玉制を編み足したという。

他にも例がたくさんある。特徴的なラーメンの背後には、その地で働く人達の姿が見えてくる。それは我自身も経験で思い当たる。仕事終わりの疲れた体、冷えた体に染み入る温かい濃い味のラーメンは格別に美味い。仲間で食べに行く事もあるが、たいがいは一人で黙々と食べていた事が圧倒的に多い。逆に家族団らんでラーメンを食べたという経験はないように思う。ラーメンという食べ物は「働く人達のごちそう」というイメージがしっくりくる。そこにはヘルシー志向だとか余計な要素は入ってこない。純粋に手頃な価格で、体が温まり、ガッツリと食べられ食後に満足感が得られるものが求められる。一時期流行った「魚介豚骨系」が思いの他定着せず、「次はあっさりした清湯系に回帰する」という評論家の予想も覆し、現在一番勢いがある系統が「二郎系」である事も、その事実を象徴しているように思う。

ラーメンは働く者の食べ物。そう考えたら客層は、会社周辺、或いは通勤経路内等ごく小さな範囲に限定される事になる。端的に言えば、工場が多い地帯、学生街、ビジネス街、住宅街等かなりミニマムな範囲での地域性を反映させる事となる。今ではある程度ラーメンのバリエーションが多岐に渡って確立されているので、その中からタイプを選択して出店しているのだろう。でも黎明期は今のように確立されていなかった為、オリジナル性が強いものが生まれたはずだ。それは逆説的にも幾多のご当地ラーメンの発生を裏付ける事にもなる。いや普通の働く人以外でもそうだ。我のような変わり者を除けば、普通のラーメンブロガーと呼ばれる人達でさえ、大体自らの行動範囲内の店を食べ歩いているし、閲覧者もそれを期待している。我だって当初はそうだった。定期的にチェックしていたサイトに、たまに他県のラーメン店が紹介されていると「何だ○○県の店の話かよ!」と読み飛ばすのが常だったから。インターネットが普及してもなお狭い範囲での地域性を反映させる食べ物とである事はあまり変わらないように思う。

もうひとつ、「働く人達のごちそう」であるならば、それなりに手頃な価格でなければならない。高度成長期時の話だけではなく、現在になっても未だそれが続いている。それはラーメンに「1000円の壁」と呼ばれる暗黙のルールが機能している事が証明となっている。「ラーメンは俺たちの食べ物であって欲しい」という切なる思いに他ならない。

そして意外だったのが地元の特産品を使ったご当地ラーメンは、意図的に作った「町おこしご当地ラーメン」を除外すれば例は少なかった。それはそうだ。特産品はラーメンに入れなくても単品で高く売れるから。畜産が盛んな地域で豚骨、牛骨等が使われるといった場合でも、それはあくまで余りとして安く入手し易いからという派生的なものだ。

ここまで話していくと「町おこし系ご当地ラーメン」は、ラーメンというカテゴリーの中において例外的な存在である事が判る。それは名物にして観光客を呼び込もうとしたり、地産地消を促進しようという意図によって作られた、地元民の方を向いていない、地元民不在のラーメンだから。今年の後半、道東遠征後半及び富山カラーラーメン辺りから違和感を感じ始めた。その地に実際に行ってみたものの、扱う店は僅かばかり、しかもラーメン専門店ですらない喫茶店のような店や道の駅などで提供されている始末。むろん地元の客の姿は少ない。ようは定着していないのだ。はるばる足を運んで虚しさを感じてしまった。そして悪い事に、こういった地元民不在のラーメンは今後増えていく傾向にある。「B級グルメ」イベントによる町おこしが盛んに行われる為だ。そうなるとこれは「ご当地ゆるキャラ」や「ご当地アイドル」同様やり放題で一過性の虚しいものになるのは目に見えている。たいがい地元の組合が地元の食材括りでレシピを考え、地元の店に参加を呼びかけるといったやり方なのだと思う。イベント開始当初は華々しくやるけど、店側からすれば組合のお付き合いとして出しているに過ぎない。他人が考えたメニューだし思い入れもほとんどない。いつまでも自分の店のメニューに加えておくような事はしないで、ほとぼりが覚めたら躊躇なくメニューから外すというのが普通だろう。そんなものは限定メニューラーメンと変わらない。いや、店主の思い入れがないので実験メニューより始末が悪い。こんなものの為にわざわざ足を運び虚しい思いをするのは馬鹿らしい。「地元民」不在のラーメンはご当地ラーメンではない。そう勝手に定義させてもらう。やっぱり実績が物語る。老舗重視だ。よって本当は10年以上と言いたいのだが、最低でも4年以上継続できた場合に地元民からの支持が得られたと判断して、今後訪問する対象にしようと思う。そうでなくては全国のサービスエリアや道の駅をまわる、情緒も何も感じられない旅を繰り返す事になってしまう。それは御免被りたい。地元の人が絶対入らないような観光地にある郷土料理店に入って郷土料理を食べて何が楽しいのか?ローカル感いっぱいの地元のラーメン屋で、地元民に紛れて、まるで近所の人間を装ってラーメンを啜るのが旅の醍醐味だと思うようになってしまった。

また冒頭に戻るが、今年異常なペースで地麺遠征に出かけたのは理由がある。もう1日に4杯も5杯もラーメンを食べるような行為を出来る年齢はとうに過ぎ、こんな事を続けていけるわけがないのは自覚している。今のところ表立った症状は出ていないもの、どう考えても今年が限界かなと思っていた。なので悔いを残さない気持ちが先に立ってしまって、逆に今年無茶な回数旅行に出かけてしまった。旅費も恐ろしいほど使ってしまった。でもそのかいあって主だった地麺巡りは終わり、残す地麺はあと僅か。来年雪解けした頃に北海道にもう一度行ってみたいな、と考えている。

今年最後に長文をだらだら書いてしまったが、一応自分の中で考えが整理出来たので良かった。来年も良い年である事を切に願うばかりだ。皆様にとっても良いお年でありますように!

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コメント

明けましておめでとうございます。

大変興味深く読ませて頂きました。
地麺の生い立ち・成立には地元の方々を視野に入れた『背景』が必須というのは、正に仰る通りだと思います。
また、昨今の『町興し系』や『評論家誘導系』が仰られた理由により定着しないというご意見にも納得です。
結局のところ、商品である前に『食事』である訳ですから、そこに作り手の食べ手に対しての何らかの思い・気持が無ければ長く続く訳はありませんし、そもそもそんな物が食べたいと思って貰える筈がありませんよね。
作り手の端くれとして、その様な初心はいつも忘れない様にしたいと思います。

2013年の地麺巡り、私が申し上げるのもなんですが、本当にお疲れ様でした。
引き続きレポートを楽しみにしておりますが、くれぐれもご自愛下さいませ。
長くなりましたが、それでは失礼致します。

丿貫様、明けましておめでとうございます。コメントもありがとうございました。
駄文にお付き合いいただきありがたい気持ちと共に赤面する次第です。
自己満足目的の文なので断定的に書いてしまった事ご容赦下さい。
発生はそうだったとしても、今や色々な嗜好があり方向性がありますからね。
温かいお言葉ありがとうございます。
今年もよろしくお願い致します。

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